でもサトシは老けない
「ピーピカピー」
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「ピーピカピー」
うわやっぱり喋った!
今、すぐ隣にピカチュウがいる。
そいつが突然ブログのタイトルを読み上げたので、 俺はすごく驚いている。
わざわざピカチュウを用意したことからも分かる通り、今回はポケモンの話だ。
最近、知らないポケモンが増えた。
これは大変なことだ。
なにせ俺はかつて、泣く子も黙るポケモン少年だった。シンオウ地方を駆け、イッシュ地方を巡った。俺自身がポケモンとなって闇のディアルガを倒すこともあった。悪の大魔王を倒すと基地はサメハダ岩に移った。シンオウ地方にいる俺は、木に埋まったまま動けない。
そんな俺が、今や、という訳だ。
さて、このブログにたどり着く人間の大半は98年生まれ。世代として直撃するのは『ダイヤモンド・パール』だろう。
俺のいた学校では所有する100Lvポケモンの数≒オスとしての強さだった。「100レベ何匹持ってる?」は名刺交換のかわりになった。
そんな『ダイヤモンド・パール』発売の2年前、ポケモンシリーズに新たな潮流が生まれている。
『ファイアレッド・リーフグリーン』の発売だ。
これは所謂リメイク商法というやつで、新作→マイナーチェンジ→旧作リメイク→新作…というポケモン界の黄金サイクルは今なお続いている。
勿論ターゲットは初代、つまり『赤緑』を遊んだ世代。一旦ポケモンを卒業した彼らを、カントー地方に引き戻そうという試みである。
「ピッカ!」
ピカチュウが鳴いた。
内容が核心に迫りつつある証拠だ。
……初代世代ってめっちゃ年上って感じしない?
感じというか、もうこれは事実だ。
事実(リアル)。
「ピカピ」
『サトシ』と同じ発音でピカチュウも復唱してくれた。赤緑のゲーム画面を見てほしい。
白黒じゃん!
中開けたら火打ち石とか入ってるでしょ。
我らがDSは当然カラーだし、画面が2つで2倍すごい。(簡単な計算だ)
そう。今をときめくダイパ世代にとって、初代世代など化石。干物。歩くミイラだ。
「カピカピ」
ピカチュウもこう言っている。
……でも、こんな事実がある。
最新作『サン・ムーン』が発売されたのは去年だ。
あれ???????????????????????????????????
なんか一緒じゃない???????
かつて俺たちが「おっさん(笑)」みたく見ていた場所に、今俺は立っている?????????????????????????
………………。
なんだ全然右のほうが短いじゃん。
よかった〜
「「「「目を背けるな」」」」
(これはピカチュウではなくお前自身の理性の声)
……絶えず時間が流れる以上、変化しないものはない。変化を無くすことはできない。
とはいえ、変化に善し悪しはある。
時間が経って良くなったら成長、悪くなったら老化だ。これは発酵と腐敗の関係に似ている。
体力、知力、その他諸々のあらゆる能力が、 いずれ「成長」のピークを迎え、腐敗に傾いていく。
誰でも皆、これまでの人生で今が一番老けているのだ。「老い」との向き合い方が下手なのは仕方ないことだと思う。
今現在まだナウなヤングであるところの俺は、 老いに因る保守性を「老害」と呼び嫌忌している。
しかしサッカー部を忌み嫌う俺の内奥にサッカー部がいたように、きっと俺にも立派な老害性が芽生え、見たこともない木ですから、誰も知らない老害になることだろう。
残念ながらこれに抗う術はなく、醜い年のとり方をしないよう用心するのが精一杯だ。
書いてるうちにすごく悲しくなってきた。
俺が生まれる以前にサトシは故郷を離れ、10歳のまま旅を続けている。
だが時間が止まっている訳でもない。
事実、最新シリーズ『サン&ムーン』のサトシは今までの冒険の記憶を引き継いでいて、すこし成長している…らしい。設定年齢は相変わらず10歳だ。
だからきっと、画面の向こうにさえ不死はない。
みな老いていき、数年ぶりに会うオーキド博士は随分小さく見える。
「カピカピ」
水を差すな。
できることなら不老不死になりたいが、そういうのを願うと大体嫌なタイプの不死者にされると星新一とか火の鳥で学んだ。
(肉体が先に朽ちるので悟る以外やることがなくなる)
ますます悲しくなってきた。
気の利いた締め方が思いつかないので、オーキド博士に代行してもらおう。
ピッピカチュウ!
やつぎばや
ときのながれは
フシギダネ
みんなもポケモン、ゲットじゃぞ〜!
(おしまい)